解散日記35

 

 12月07日

 

  舞台の稽古が佳境に入ってきた。一日、6時間ぐらい稽古している。ぽかぽかの日だまりがあるころに、地下に入り、外に出るとヒューと寒い風が頬をかすめる夜になる。寒い! でも物すごく面白いものになると思う。解体社の中嶋みゆきさんは、筋肉を硬直させて振動させたり、本気で何度も体当たりしたり……それでいてナイーブな表現もどんどん吸収していく。 この役者は凄い。今までたくさんの役者さんと仕事をしたけれど……ぴか一かも。

 今は、夜しか会社にも行かれないので、バイトのAさんともメイルやメモで連絡を取り合っている。ボクは、ペヨトル工房の解散作業を、Aさんにまかせきってしまっているが、Aさんが来てくれなかったら、解散の最後の盛り上がりも絵に描いた餅になるところだった。書籍の発送、伝票整理、そして今は、年末の舞台のDM発送と、目が回るほど仕事がある。ありがとうね。もちろんネットの向こうで MLを管理してくれている人や本を売ってくれている人にも。サンクス!

 新聞にペヨトル工房の解散のことが載ったことは、書店でのフェアに少し良い影響を与えはじめたようだ。結構、書店で本が動いている。HPの運動(?)もあって、直売の動きがスムーズになっていて、声がかかって動かすまでに時間がかからない。京博の「若冲」展のミュージャムショップにも後半、夜想を送りだした。数は多くなかったけれど完売だ。

 その京博の方が、夜想を買うのは、女の人ばかり。男は本を読まんのかと、軽い憤りを伝えてきたけれど、ちょうど同じ日に、佐藤君が、MLでパルコのペヨトル工房フェアで、本を買っているのは女性ばかりと書いていた。う〜ん。二つの現象をとりあげて、何事か言うのは余りに軽率なので、控えるけれど、何かが変わってきているぞ。

 流通も変わらなければならないと思う。出版社は、取次に委託で本を出して、書店も委託で本を売る。売れたって売れなくったってリスクはない。フェアだって好きなだけこっちに注文してきて、しかも見本で若冲葉書のセットをあけて、お客に見せて、それがぼろぼろになったものは返品できるのだから。そういう流通リスクはすべて出版社が負っている。お客が本をほおったって、書店は文句を言わない。だって自分のとこの本じゃないもの。委託の本だもの。こんなことを続けていたら駄目だ。そう思う。仕入れのリスクを書店も負ったら良いと思う。その代わり値段は叩けば良い。

  HPでもりあがって、新聞に書かれて、いろいろな人の思いがあって、盛り上がった流れを今、フェアをやる書店が巧く使う。書店が積極的にペヨトル工房の解散を動かしてくれたかどうか。(三月書房さんをはじめとする、HPでのネットでつながっている書店は別だし、今だに発言もしないで、ペヨトル工房の本を売り続けている書店さんもあると思うから慨しての話しだが。)別に非難をしているわけではない。早晩、書籍の流通は危なくなるような気がする。フェアをするのがサポートだと考えているのだろうから。解散してはじめてフェアをやった大型書店がある。売れるから良いんだけど何か違う気がする。じゃぁ、ボクが夜想を復刊したらフェアを続けてくれるかい? 復刊創刊の記念に、300冊買いきってくれるかい? いや300は無理だから、80冊なら良いよとぴったり読者の数を読んでくれるかい? 

 今、こういう大きな口をたたけるのも、HPでの支援があったからこそだけど、そしてボクはボクで、これからもし紙メディアをやるんだとしたら、どうしたら今の流通の中で、読者とつながっていけるかを真剣に考えていかなくてはならないだろう。それはもちろんコンテンツのあり方を含めて、そう思うのだ。



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