解散日記38

 

 12月19日

「こっぷノなかノ太陽」

 今日から解体社のアトリエは、「こっぷノなかノ太陽」の準備作業に入った。1.5トンの砂が敷かれ、パイプで仮設のホリゾントを組む。舞台監督の田中英世さんが、総指揮をする。ボクらは、会場で練習ができないので、ダンサーの片上守さん長沢恵さん解体社の中嶋みゆきさんと、別の会場でリハーサルをした。終わって様子を見に、午後9時解体社にたどり着いたら、田中英世さんが疲れ切った顔をして、それでもアドレナリンを発散させて客席に居た。

 美術の伊東篤宏さんも朝から会場で100本近い蛍光灯をセットし続けて、まだ作業し続けている。声をかけると、背中を向けながらあとちょっとと言っている。解体社アトリエは、小さな会場だが、相変らずボクの仕込は、手間がかかって、本番にまにあうかどうかぎりぎりのセッティングだった。予定より一日早く、パイプも組み終り、養生のリノリュウムも敷き終り、しかも光が漏れないように、仮設の一文字を綺麗につってある。うわー。綺麗だなぁ。ほとんどできてるじゃないの。あ、照明も吊ってある。「あとシュートだけ?」「いや相川さんシュートもしていったよ」と、田中英世さん。う〜ん。凄い。「狭い空間に持ち込むものが多いからどうなるかと思ったけど、空間が変化したね。こうなると全部のエッジをたてたくなっちゃうんだよね」とニコニコ笑っている。

 音響の落合敏行さんもこの後に及んで曲を差し替えるが、それを嫌がりもせずに積極的にベストを目指して作業を進める。微妙な音量のタッチもインプットして、見事に再現する。衣裳の有本裕美子さんもディテールに及ぶ注文を理解してすぐに作り替えてくれる。というかプラスアルフアの挑戦をしてくるのが嬉しい。

 「こっぷノなかノ太陽」は、もちろん見せることのために作っているのだが、スタッフとそしてパフォーマーと作り上げていく過程に、醍醐味と楽しみがある。みんなのやっていることを、じっと見て、感覚で応じて、アレンジし、方向性を決めていく。OKならもちろんそのまま進めていく。ものすごく楽しい。久々の感覚だ。

 長いこと舞台をやってきたが、今回ほど、スタッフの創造力が発揮されているのを経験したことがない。はじめての人も何人かいるのに。ボクのやり方が変わったのか、年をとって丸くなったのか。それは良く分からない。ペヨトル工房を解散して、一人になって思うことは、スタッフのありがたみだ。一人では雑誌も舞台も作ることができない。しかしこういう心境になるまでに、25年という時間が必要だったのかも知れない。



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