解散日記48

 3月23日

          大寒桜の咲くころ

 上野公園の入口の大寒桜は、名の通り一番早く花を咲かせる。その桜に花の気配がするほどに暖かくなってきた。もう4月が来る。解散してからそろそろ1年になる。

 思いがけず、ネットを通じてたくさんの方々に支援を受けて、この一年、ペヨトル工房の在庫は、あちこちに退避させていただいたり、ネット上の販売で売っていただいたりして、これまでの倒産/解散した出版社の在庫とは全く異なった運命をたどりました。いや運命などといういい加減な言い方をしたら罰があたります。多くのサポーターの熱意と行動によって在庫が救われたのです。さらに読んでいただける人の手に渡ったのです。本当に望外の幸せです。ペヨトル工房も、ペヨトル工房の本も、そしてボクも、ペヨトル工房にかかわってくれたすべての人にとってもこの上のない最後でした。

 できるだけ在庫を切らないまま解散会社を運営するという不思議な体験をしました。貴重な体験でしたし、こんなに人のつながりと、愛を感じたのも初めてのことでした。しかし在庫販売も隔離も一段落して、解散会社の運営もここまでという感じになってきました。経費を支えきれなくなったので、さらにリストラをしないといけなくなりました。今もって入る在庫をHPで対応できる分だけ残して、最終段階の形に入ろうと思います。御支援ありがとうございました。そしてこれからもペヨトル工房の在庫たちをよろしくお願いします。

 大寒桜が咲く頃にペヨトル工房は解散しました。大寒桜は、上野公園でいち早く咲き、他の桜が散る最後まで花をつけています。二毛作にしなよ。そう言ってくれた若い友人がいます。もう一度、何かをと思います。でも何かをしないまま動けなくなっていくという現実もあります。解散後の動きはもう少し時間がかかるかもしれません。



前に戻る